宮崎県は「日本のひなた」と呼ばれ、温暖な気候と豊かな自然、そして人々の温かさで知られる魅力的な移住先です。近年、リモートワークの普及や地方回帰の流れを受けて、都市部から宮崎県への移住を検討する方が増加しています。そんな移住希望者にとって重要な住まい探しの手段として注目されているのが「空き家バンク」です。
空き家バンクは、地域の空き家を有効活用し、移住者と地域をつなぐ重要な仕組みです。宮崎県では県全体で空き家バンクの充実を図っており、移住希望者の多様なニーズに応える物件情報を提供しています。本記事では、宮崎県の空き家バンクの現状から利用方法、成功のポイントまで詳しく解説します。
空き家バンクとは
空き家バンクとは、自治体が空き家の有効活用と流通促進を図るため、空き家の情報を収集し、インターネット等を通じて利用希望者に発信する仕組みです。空き家の所有者と利用希望者をマッチングすることで、地域の住宅資源を有効活用し、移住・定住の促進を図ります。物件の仲介業務は、宅地建物取引業協会等の専門機関が担当するため、安心して利用できる制度となっています。
宮崎県の空き家事情
宮崎県の空き家問題は深刻化しており、最新の統計データによると重要な課題となっています。令和5年住宅・土地統計調査の結果、宮崎県の総住宅数のうち空き家は90,700戸と、平成30年（84,200戸）と比べ6,500戸増加し過去最多となりました。総住宅数に占める空き家の割合（空き家率）は16.3％と、平成30年（15.4％）から0.9ポイント上昇し、過去最高を記録しています。
宮崎県の空き家率16.3％は全国平均13.8％を大きく上回っており、空き家数は約90,700戸で1993年の約37,900戸から30年で2倍以上に増加している状況です。この背景には、高齢化の進行や人口減少があります。特に高齢者の持ち家率が80％以上と高く、施設入所や死亡により空き家となるケースが多くなっています。
一方で、この状況は移住希望者にとっては豊富な選択肢があることを意味します。宮崎県の温暖な気候や農業を中心とした産業構造、そして豊かな自然環境は、多くの移住希望者にとって魅力的な要素となっています。
宮崎県内の主要な空き家バンク
宮崎市空き家情報バンク
県庁所在地である宮崎市では、空き家の有効活用及び流通促進を図るため、所有者の意向を確認したうえで、空き家の情報を公開しています。空き家バンクの運用・仲介にかかる業務については、「一般社団法人宮崎県宅地建物取引業協会」、「公益社団法人全日本不動産協会宮崎県本部」及び「一般社団法人REC宮崎」に協力を依頼しています。
宮崎市の特徴は、都市機能と自然環境のバランスが取れていることです。商業施設や医療機関、教育機関が充実している一方で、海や山へのアクセスも良好で、都市的な便利さと自然の豊かさを両立できる環境です。
都城市空き家等情報バンク
都城市では、農地付き空き家として掲載されている物件もあり、売主との契約により農地も購入することができますが、農地法第3条に基づく申請書などを農業委員会へ提出し、許可を受ける必要があります。都城市は農業が盛んな地域で、農業に興味のある移住者には魅力的な選択肢が豊富にあります。
えびの市定住促進サイト
えびの市では定住促進サイトを運営し、空き家バンクの情報提供を行っています。えびの市は霧島連山の麓に位置し、温泉や豊かな自然環境が魅力の地域です。人口規模は小さいですが、アットホームなコミュニティと美しい自然環境を求める移住者に人気があります。
県全体の取り組み
宮崎県では「宮崎県空き家バンク」として市町村の空き家情報を集約し、新たな物件が追加された際に、登録条件にマッチした物件情報をメールで配信するサービスを提供しています。これにより、県内全域の空き家情報を一元的に検索・比較することが可能です。
宮崎県内のその他の空き家バンク
空き家バンク利用のメリット
豊富な物件選択肢
宮崎県の空き家バンクでは、都市部のマンションから農村部の古民家まで、多様な物件が登録されています。移住者のライフスタイルや予算に応じて、幅広い選択肢から選ぶことができます。
手頃な価格設定
一般的な不動産市場と比較して、空き家バンクの物件は価格が抑えられている傾向があります。特に地方部では、都市部では考えられないような低価格で一戸建てを購入できるケースも少なくありません。
地域とのつながり
空き家バンクを通じた移住は、地域コミュニティとのつながりを築きやすいという特徴があります。自治体や地域住民が移住者を歓迎し、地域への溶け込みをサポートしてくれることが多いです。
自治体のサポート体制
宮崎県内の多くの自治体では、空き家バンク利用者向けのサポート体制を整備しています。物件見学のアレンジから契約手続きのサポート、移住後のフォローアップまで、きめ細かな支援を受けることができます。
宮崎県特有のメリット
宮崎県は温暖な気候で年間を通じて過ごしやすく、農業や観光業が盛んな地域です。空き家バンクを通じて移住することで、農地付きの物件を取得し、農業を始めることも可能です。また、豊かな自然環境の中でアウトドアライフを楽しむことができます。
利用時の注意点
建物の状況確認
未登記建物や旧耐震基準（昭和56年5月31日以前建築）で建築された建物なども登録されています。物件見学時には、建物の構造や設備の状況を詳しく確認し、必要に応じて専門家による調査を依頼することが重要です。
農地取得の手続き
農地付きの空き家を購入する場合は、農地法に基づく手続きが必要です。農業委員会への申請や許可要件の確認など、専門的な知識が必要となるため、事前に十分な調査と準備を行いましょう。
インフラ・生活環境の確認
地方部の物件では、上下水道の整備状況、インターネット環境、最寄りの商業施設や医療機関までの距離など、都市部とは異なる生活環境を事前に確認することが大切です。
宮崎県特有の注意点
宮崎県は台風の影響を受けやすい地域です。物件選びの際は、過去の台風被害の状況や建物の耐風性について確認することが重要です。また、温暖な気候のため、シロアリなどの害虫対策についても事前に確認しておきましょう。
移住支援制度との連携
宮崎県移住支援金制度
宮崎県では、都市部から県内に移住し、中小企業へ就職するなど要件を満たした場合に、移住支援金を支給する事業を実施しています。県全体では最大100万円（世帯）の移住支援金が支給されます。宮崎市では、国の移住支援金に市独自の加算を行い、宮崎県外から移住して就業又は起業等をされた方に最大200万円が支給される場合もあります。
都城市の移住支援制度
都城市では、移住・定住の促進および地域の人材不足の解消に資するため、補助要件を満たす場合に、移住応援給付金を支給しています。転勤による転入者や新卒採用者、国家公務員は対象外となりますが、条件を満たす移住者には経済的な支援が提供されます。
その他の支援制度
多くの市町村では、空き家改修費用の補助、移住体験住宅の提供、就農支援など、移住者のニーズに応じた多様な支援制度を用意しています。空き家バンクの利用とあわせて、これらの制度を活用することで、より安心して移住を実現できます。
成功のポイント
事前の情報収集と現地視察
移住を成功させるためには、インターネット上の情報だけでなく、実際に現地を訪れて物件や地域の雰囲気を確認することが重要です。可能であれば、季節を変えて複数回訪問し、年間を通じた生活環境を把握しましょう。
地域コミュニティとの関係構築
宮崎県の地方部では、地域コミュニティとの関係が生活の質に大きく影響します。移住前から地域のイベントに参加したり、地元の方との交流を図ったりすることで、スムーズな地域への溶け込みが期待できます。
リモートワークと二拠点生活の活用
コロナ禍以降、リモートワークの普及により、都市部での仕事を続けながら地方に移住することが可能になりました。宮崎県でも、インターネット環境の整備が進んでおり、リモートワーカーや二拠点生活を実践する移住者が増加しています。
段階的な移住の検討
いきなり完全移住するのではなく、まずは移住体験住宅での滞在や週末移住から始めることも有効です。実際の生活を体験することで、移住後のギャップを最小限に抑えることができます。
専門家との連携
空き家の購入や改修、移住手続きなど、専門的な知識が必要な場面では、地元の不動産業者、建築業者、行政書士などの専門家と連携することが重要です。宮崎県では、移住者向けのサポート体制が整っているため、これらの専門家を紹介してもらうことも可能です。
まとめ
宮崎県の空き家バンクは、移住・定住を希望する方にとって貴重な住まい探しの手段です。県内には9万戸を超える空き家があり、移住者の多様なニーズに応える物件が豊富に存在します。温暖な気候と豊かな自然環境、そして人々の温かさという宮崎県の魅力を活かしながら、空き家バンクを通じて理想の住まいを見つけることができるでしょう。
移住は人生の大きな決断ですが、十分な準備と情報収集、そして地域との関係構築を心がけることで、必ず成功に導くことができます。宮崎県の「ひなた」のような温かさと豊かさに包まれた新しい生活を、空き家バンクという扉を通じて実現してください。あなたの移住が、宮崎県での新たな人生の始まりとなることを心から願っています。
