九州の北東部に位置する大分県は、雄大な自然と温泉文化、そして適度な都市機能が調和した魅力的な地域です。別府温泉や由布院温泉などの世界的に有名な温泉地を有し、海と山の両方の恵みを享受できる環境は、都市部からの移住者にとって非常に魅力的な選択肢となっています。
近年、リモートワークの普及や働き方の多様化により、地方移住への関心が高まっています。大分県も例外ではなく、豊かな自然環境と都市部へのアクセス性を兼ね備えた立地から、移住・定住先として注目を集めています。しかし、移住を検討する際の最初の壁となるのが「住まい探し」です。
この課題を解決する重要な手段として、「空き家バンク制度」が注目されています。空き家バンクは、地方自治体が運営する空き家情報提供システムで、移住希望者と空き家所有者をマッチングする役割を果たしています。大分県内でも多くの自治体が積極的に空き家バンクを活用し、移住者の住まい確保をサポートしています。
空き家バンクとは
空き家バンクとは、自治体が運営する空き家情報の提供システムです。空き家を売却・賃貸したい所有者から物件情報を登録してもらい、移住や住み替えを希望する利用者に情報提供する仕組みです。
重要な点として、多くの自治体では物件情報の提供のみを行い、売買や賃貸の契約自体は原則として当事者間または不動産業者が行います。自治体は仲介行為を行いませんが、移住に関する各種支援制度との連携により、移住希望者にとって心強いサポート体制が整っています。
大分県の空き家事情
大分県の空き家数は115,300戸、空き家率は19.1％となっています。全国平均の13.8％を大きく上回っており、九州内では鹿児島県に次ぐ高さです。市町村ごとに空き家率には差があり、竹田市や国東市では28％前後と非常に高い一方、大分市は11.7％と比較的低くなっています。この豊富な空き家は、移住希望者にとって選択肢が多いことを示しています。
大分県の空き家事情には、いくつかの特徴があります。まず、温泉地域特有の別荘や保養所として建設された物件が空き家化するケースが見られます。これらの物件は、一般的な住宅とは異なる魅力を持っており、移住者にとって特別な住環境を提供できる可能性があります。
また、人口減少が進む中山間地域では、農業従事者の高齢化に伴い、農家住宅が空き家となるケースも増加しています。これらの物件は広い敷地を持つものが多く、家庭菜園や農業体験を希望する移住者にとって魅力的な選択肢となっています。
一方で、大分市や別府市などの都市部でも、高齢化の進行により空き家が発生しています。これらの物件は交通利便性が高く、都市生活を望む移住者のニーズに応えられる特徴を持っています。
大分県内の主要な空き家バンク
大分市住み替え情報バンク
県庁所在地である大分市では、「住み替え情報バンク」として空き家バンク制度を運営しています。大分市住み替え情報バンクを利用しませんかという取り組みを通じて、市内の空き家情報を提供しています。大分市は県内最大の都市部でありながら、豊かな自然環境も近く、都市機能と自然環境のバランスが取れた移住先として人気があります。
交通インフラも整っており、JR九州の主要路線が通り、高速道路のアクセスも良好です。これにより、福岡や熊本などの他県への移動も容易で、仕事の都合で定期的な出張が必要な移住者にとっても利便性の高い立地となっています。
別府市空き家バンク
別府市空き家バンクでは新着物件として朝見二丁目（1,070万円）、野田（600万円）、亀川四の湯町（500万円）、小坂（1,280万円）などの物件が掲載されています。世界的に有名な温泉地である別府市の空き家バンクは、温泉文化と共生する特別な住環境を提供しています。
別府市の魅力は何といっても豊富な温泉資源です。市内には多数の共同浴場があり、日常生活の中で温泉を楽しむことができます。また、観光地としての側面もあるため、民宿やゲストハウス経営を検討する移住者にとっても魅力的な立地となっています。
国東市空き家バンク
国東市では2022年より空き店舗についてもバンク制度を設け、空き工場も募集中です。国東市は大分県の北東部に位置し、国東半島の独特な文化と歴史を持つ地域です。仏教文化が色濃く残る地域として知られ、精神的な豊かさを求める移住者に人気があります。
国東市の特徴は、空き家だけでなく、空き店舗や空き工場まで対象とした包括的な空き物件活用システムを構築している点です。これにより、住居だけでなく、事業を始めたい移住者にとっても魅力的な選択肢を提供しています。
津久見市空き家バンク
津久見市では警固屋･入船･川上地区で400万円、中町で200万円、大字津久見で500万円などの物件が登録されています。津久見市は大分県の南東部に位置する海沿いの都市で、セメント工業で知られる工業都市でもあります。
津久見市の魅力は、海に面した立地による新鮮な海産物と、比較的手頃な価格の物件が多いことです。漁業や海に関わる仕事に興味のある移住者や、海辺での生活を希望する方にとって理想的な環境を提供しています。
大分県のその他の空き家バンク
| 市区町村 | 空き家バンク |
|---|---|
| 大分市 | 大分市住み替え情報バンクを利用しませんか |
| 別府市 | 別府市空き家バンク |
| 中津市 | なかつ移住の窓口 |
| 日田市 | 日田市空き家バンク事業 |
| 佐伯市 | 佐伯市空き家バンク |
| 臼杵市 | うすき暮らしナビ |
| 津久見市 | つくみde Life |
| 竹田市 | 農村回帰竹田市移住。定住支援サイト |
| 豊後高田市 | 豊後高田市IJU支援サイト |
| 杵築市 | 杵築市移住定住ポータルサイト |
| 豊後大野市 | ぶんごおおの暮らし手帖 |
| 国東市 | 国東市空き家バンク |
| 日出町 | 日出町空き家バンク |
| 九重町 | 九重町空き家・土地バンク |
| 玖珠町 | 玖珠町空き家バンク |
空き家バンク利用のメリット
手頃な価格での住宅取得
空き家バンクに登録されている物件は、一般的な不動産市場と比較して手頃な価格設定になっているケースが多くあります。これは、所有者が早期の売却や賃貸を希望しているためで、移住者にとって住宅取得費用を抑えられる大きなメリットとなります。
自治体による情報提供とサポート
空き家バンクを通じて、自治体は物件情報の提供だけでなく、移住に関する総合的な情報提供を行っています。地域の生活情報、各種手続きの案内、移住支援制度の紹介など、移住者が新しい環境に馴染むための支援体制が整っています。
地域コミュニティとの連携
空き家バンクを通じた移住は、地域コミュニティとの良好な関係構築がしやすいという特徴があります。自治体が情報提供を行うことで、地域住民との橋渡し役も期待でき、移住後の地域での生活がスムーズに始められます。
移住支援制度との連携
各自治体では、空き家バンク利用者を対象とした独自の支援制度を設けています。住宅改修費の補助、引越し費用の支援、家具購入費の助成など、移住に伴う初期費用を軽減する制度がありますが、補助金額や条件は自治体ごとに異なります。詳細は各自治体の公式サイトでご確認ください。
大分県特有のメリット
大分県での空き家バンク利用には、温泉付き物件や海・山の自然環境を活かした物件が選択できるという独特のメリットがあります。また、食材が豊富で生活費を抑えやすく、都市部からのアクセスも良好なため、二拠点生活にも適しています。
利用時の注意点
物件の状態確認
空き家バンクの物件は、水回りをはじめ、建物の診断などは行っておりません。そのため、契約前には必ず現地での詳細な物件確認が必要です。特に築年数の古い物件では、構造的な問題や設備の老朽化が懸念されるため、専門家による建物診断を受けることをお勧めします。
改修費用の見積もり
空き家は長期間使用されていないことが多く、入居前に相当な改修が必要になる場合があります。水道、電気、ガスなどのライフラインの確認から始まり、内装や設備のリフォーム費用も含めた総合的な予算計画を立てることが重要です。
地域特有の注意点
大分県特有の注意点として、温泉地域では硫黄成分による建物への影響を考慮する必要があります。また、海沿いの地域では塩害による金属部分の腐食、山間部では湿気や虫害への対策も重要な検討事項となります。
交通アクセスの確認
都市部以外の物件では、最寄り駅やバス停までの距離、公共交通機関の運行頻度を事前に確認することが重要です。特に冬季の交通状況や、日常的な買い物先へのアクセスなど、実際の生活を想定した検討が必要です。
地域のルールと慣習
地方移住では、地域独自のルールや慣習に配慮することが求められます。自治会への参加、地域行事への協力、ゴミ出しのルールなど、事前に地域の生活様式を理解しておくことが、円滑な移住生活の基盤となります。
移住支援制度との連携
大分県の移住支援金
大分県外から大分県への移住者には、最大100万円の移住支援金が支給されます（世帯の場合、単身の場合は60万円）。ただし、2025年10月1日以降は東京圏以外からの移住の場合、申請時点で39歳以下または18歳未満の世帯員を帯同する子育て世帯が対象となるなど、要件が一部変更されています。
支援金の対象となるには、東京23区に在住または東京圏から23区への通勤をしていた方が、大分県内の対象求人に就職するか、起業する場合などの条件があります。就業先が、大分県が移住支援金の対象としておおいたジョブナビに掲載している求人であることが主要な条件の一つとなっています。
大分市の移住者応援制度
県外から大分市に移住する方を応援します ～大分市移住者応援給付事業給付金・大分市移住支援事業に係る移住支援金～として、大分市独自の支援制度も充実しています。
別府市の移住支援
別府市移住支援金交付制度では、テレワークを行う者も対象となるなど、現代の働き方に対応した柔軟な支援制度を設けています。
住宅関連支援制度
各市町村で空き家バンク利用者を対象とした住宅関連の支援制度が設けられています。例えば、津久見市では購入補助最大110万円、家財処分最大10万円、豊後大野市では購入・改修費最大100万円など、自治体ごとに内容・金額が異なります。
これらの制度には、住宅改修費の補助、家財道具購入費の助成、引越し費用の支援など、移住初期の経済的負担を軽減する様々なメニューが用意されていますが、詳細な条件や申請方法は各自治体の公式サイトで必ずご確認ください。
成功のポイント
段階的な移住アプローチ
大分県での移住を成功させるためには、段階的なアプローチが効果的です。まずは短期滞在や二拠点生活から始めて、地域の生活環境や気候に慣れることから始めましょう。温泉地特有の文化や、地域コミュニティの特徴を理解することが、長期的な定住成功の鍵となります。
地域資源の活用
大分県の豊富な温泉資源、農産物、海産物などの地域資源を積極的に活用することで、移住生活をより豊かにすることができます。地元の食材を使った料理や、温泉を活用した健康管理など、大分県ならではの生活スタイルを楽しむことが重要です。
リモートワークとの組み合わせ
現在の仕事を継続しながら移住する場合、リモートワーク環境の整備が不可欠です。大分県内でも光ファイバーなどの通信インフラが整備されている地域が多く、適切な環境選択により都市部と変わらない仕事環境を構築できます。
二拠点生活の活用
完全移住に不安がある場合は、二拠点生活から始めることも有効な選択肢です。大分県は福岡や関西圏からのアクセスも良好なため、週末や長期休暇を利用した二拠点生活が実現しやすい立地条件を持っています。
地域貢献への意識
移住者として地域に受け入れられるためには、地域貢献への積極的な姿勢が重要です。地域の伝統行事への参加、地域産業への協力、若い世代としての新しいアイデア提供など、地域の発展に寄与する意識を持つことが求められます。
最新トレンドの活用
コロナ禍以降、ワーケーションやデジタルノマドなどの新しい働き方が注目されています。大分県の温泉地や自然環境は、これらのトレンドに適した環境を提供しており、新しいライフスタイルの実現地として大きな可能性を秘めています。
まとめ
大分県の空き家バンクは、移住・定住希望者にとって非常に価値の高いシステムです。19.1％という高い空き家率が示すように、豊富な選択肢の中から理想の住まいを見つけることができる環境が整っています。
温泉文化、豊かな自然環境、そして都市部へのアクセス性という大分県独特の魅力と、最大100万円の移住支援金をはじめとする充実した支援制度が組み合わさることで、移住者にとって非常に魅力的な選択肢となっています。
重要なのは、空き家バンクを単なる住宅探しのツールとして捉えるのではなく、新しい地域での生活を始めるための情報収集システムとして活用することです。自治体の担当者と密に連絡を取り、地域の特徴や生活環境について十分な情報収集を行うことが成功の鍵となります。
大分県での新しい生活は、都市部では味わえない豊かさと、現代的な利便性を両立できる理想的な環境を提供してくれるでしょう。空き家バンクを活用して、あなたにとって最適な住まいと生活スタイルを見つけてください。温泉と自然に囲まれた大分県で、新しい人生の章を始めてみませんか。
