九州の玄関口として発展する福岡県は、福岡市や北九州市といった大都市を有しながら、海・山・田園といった豊かな自然環境にも恵まれています。都市生活と自然環境のバランスがとれた福岡県は、全国でも移住・定住希望者に人気のエリアとなっています。
その中で「空き家バンク」は、住宅確保をはじめ、地域コミュニティへの定着や住環境の再生を支援する制度として、移住希望者から注目を集めています。
空き家バンクとは
空き家バンクは、自治体が所有者から登録を受けた空き家情報を、購入希望者や賃貸希望者に紹介する制度です。掲載情報の公開、内見の調整、契約手続き、改修費補助などを通じて、移住希望者が安心して住宅を取得・活用できるよう支援します。
福岡県の空き家事情
総務省「令和5年住宅・土地統計調査」によると、福岡県の住宅総数は2,581,200戸、空き家数は328,600戸で、空き家率は12.7%(計算値12.73%)。これは全国平均13.8%を下回る水準です。
県内では福岡市や北九州市といった都市部では空き家率が比較的低い一方で、農山漁村部や中山間地域では空き家率が高く、地域差が大きいのが特徴です。2018年調査時点では空き家数297,600戸だったため、直近5年で31,000戸増加しています。
福岡県では、空き家の増加が地域課題となっており、県が運営する「福岡県空き家活用サポートセンター(イエカツ)」がその対策の一環を担っています。
福岡県内の主要な空き家バンク

福岡市
福岡市は住宅総数が多く、空き家率は県内最低水準。市独自に空き家情報の収集・公開を行い、耐震改修補助や建築相談、利活用に関する支援を行っています。空き家活用セミナーや専門家による相談体制も整っています。
北九州市・久留米市
北九州市では空き家バンクを通じて空き家利活用の促進を進めており、相談窓口も充実しています。
久留米市では「空き家活用リフォーム助成事業」として、居住や賃貸を目的とした改修費用のうち最大50万円を補助。対象は空き家バンクに登録された物件の取得者です。
八女市
「八女に住んでみらんの?」というユニークな空き家バンクポータルを運営。改修補助(上限50万円)、移住体験の受け入れ体制、空き家利活用イベントなども実施しています。
宗像市・糸島市
宗像市では、移住支援金として最大100万円(世帯)・60万円(単身)を支給し、空き家バンクと連携しています。糸島市は地域コーディネーターを配置し、空き家活用や移住支援を伴走型でサポートしています。
福岡県内のその他の空き家バンク
空き家バンク利用のメリット

- 初期費用が抑えられる
- 格安物件の掲載が多く、購入・賃貸のコストを削減できます。
- 補助金や支援制度の活用
- 改修費助成(例:久留米市・八女市)や移住支援金(宗像市)などが充実。
- 行政のサポート体制
- 契約・リフォーム・登記・利活用まで、自治体が相談に乗ってくれます。
- 地域に根ざした暮らしが可能
- 見学会や移住体験を通して地域文化に触れることができます。
- 自然と都市の両立が可能
- 福岡市や糸島市など、通勤圏内で自然と共生できるエリアが豊富です。
利用時の注意点

- 築古物件では、老朽化や雨漏り、白アリ被害などに注意。
- 空き家に対する補助制度には申請期限や対象条件があります。
- 地域によっては交通手段が限られ、車の利用が前提となる場合があります。
- 台風・豪雨などの自然災害への備えも必要です。
移住支援制度との連携
福岡県は「福岡県空き家活用サポートセンター(イエカツ)」を中心に、空き家利活用の相談支援を行っています。また、多くの市町村が以下のような独自支援を展開中です。
- 移住支援金制度:例)宗像市(最大100万円)、他市町村でも実施
- 家賃補助・奨学金返済支援:八女市・糸島市などで一部実施
- 体験住宅・移住体験イベント:中間市、朝倉市など
成功のポイント

- 複数の自治体を比較・検討する
- 補助内容や空き家の質は自治体ごとに差があります。
- 実際に現地を訪れる
- 風土、地域の雰囲気、買い物環境などを自分の目で確かめましょう。
- 補助制度の期限・条件を確認
- 補助金や登録制度には期限があり、事前にスケジュールを立てることが重要です。
- リモートワークや二拠点生活を想定する
- 都市部とのアクセスや通信インフラの確認も忘れずに。
- 地域との関わりを大切にする
- 行事や自治会活動への参加が、スムーズな定住への第一歩となります。
まとめ
福岡県は、都市機能と自然環境のどちらも享受できる、全国でも魅力的な移住先の一つです。空き家バンクと移住支援制度を活用すれば、住まいの確保と地域とのつながりを同時に築くことができます。
住み慣れた街を離れて新たな生活を始める方にとって、福岡での移住はきっと大きなチャンスとなるでしょう。地域に根ざした暮らしの第一歩を、ぜひ空き家バンクから踏み出してみてください。