はじめに
宮城県は、仙台市を中心とした都市部の利便性と豊かな自然環境が調和した、移住先として注目度の高い地域です。日本三景の一つである松島や、400年の歴史を持つ仙台七夕まつりなど、豊富な観光資源に恵まれています。東北地方の太平洋側に位置し、比較的温暖で降雪が少ないという気候的な特徴も、移住を検討する多くの方々にとって魅力的な要素となっています。
近年、宮城県への移住・定住を希望する方が増加している背景には、新幹線をはじめとした交通インフラの充実により、首都圏へのアクセスが良好であることが挙げられます。リモートワークの普及とともに、都市部の利便性を享受しながら、より豊かな住環境を求める方々にとって、宮城県は理想的な選択肢となっています。
そんな宮城県での移住・定住を成功させるために重要な役割を果たすのが「空き家バンク」です。空き家バンクは、移住希望者が手頃な価格で良質な住宅を見つけるための重要なツールであり、地域の活性化と新しい住民の定着を支援する仕組みとして、県内各自治体で積極的に運営されています。
空き家バンクとは
空き家バンクとは、自治体が運営する空き家の売り手と買い手、貸し手と借り手をつなぐマッチングサービスです。空き家の所有者が「売りたい・貸したい」物件を登録し、移住希望者や住み替えを検討している方が「買いたい・借りたい」物件を探すことができる仕組みです。一般の不動産市場では流通しにくい物件も多く掲載されており、市場価格よりも安価で取得できる可能性があります。自治体が関与することで、移住者と地域住民との橋渡し役も担っており、単なる不動産取引を超えた地域コミュニティへの参加支援も期待できます。
宮城県の空き家事情
宮城県の空き家状況は、全国的な傾向と同様に増加傾向にあります。宮城県の住宅ストック数は年々増加しており、そのうち空き家数は、東日本大震災の影響により一時減少したものの、年々増加しています。空き家率(総戸数に対する空き家数の割合)は、R5年で12.4%となっており、全国平均の13.6%を下回っているものの、確実に増加している状況です。
平成30年住宅・土地統計調査によると、「空き家」が130,500戸で平成25年より33,600戸増加し、34.7%増となったことが報告されています。これは全国平均の3.6%増を大きく上回る増加率であり、震災復興の過程で建設された住宅ストックの増加と、人口動態の変化が影響していると考えられます。
宮城県の空き家事情の特徴として、仙台市を中心とした都市部では老朽化した住宅や相続により管理が困難になった物件が多く、一方で郊外や農村部では過疎化に伴う空き家が目立ちます。しかし、県内の交通網が仙台市を中心に発達しているため、郊外の空き家でも都市部へのアクセスが比較的良好な立地にある物件が多いのが魅力です。また、東北地方の中では積雪量が少なく、住宅の維持管理コストが他の雪国地域と比較して抑えられるという利点もあります。
宮城県内の主要な空き家バンク

仙台市の取り組み
政令指定都市である仙台市では、都市部特有の空き家問題に対応するため、密集市街地の老朽化住宅の活用促進や、郊外住宅地での世代交代支援に力を入れています。仙台市内では、地下鉄やバス路線が充実しているため、中心部からやや離れた住宅地でも通勤・通学に便利な立地の空き家が多数あります。
大崎市の積極的な取り組み
大崎市では「おおさき移住支援センター」を通じて空き家バンクを運営しており、令和5年度は14件の空き家が成約済となりました。同市は移住・定住支援に特に力を入れており、空き家情報の積極的な収集と提供を行っています。農業や自然環境を重視する移住希望者にとって魅力的な物件が多数登録されています。
栗原市の注目度
宮城県栗原市は「住みたい田舎ベストランキング2024」全国第1位に選ばれたエリアとして、移住先として高い評価を受けています。都会へのアクセスの良さに加え、子育て・高齢者福祉・教育・産業などの充実が評価されており、空き家バンクでも注目の自治体です。
登米市の地域密着型サービス
登米市では「登米市空き家情報バンク」を運営しており、地域の特性を活かした物件情報の提供を行っています。農業や田園生活を希望する移住者に適した物件が多く、地域コミュニティとの連携も重視されています。
宮城県宅地建物取引業協会との連携
宮城県宅地建物取引業協会では、複数の市町との間で空き家バンク協定等を締結し、空き家等を「売りたい・貸したい」所有者と「買いたい・借りたい」移住希望者が安心して空き家等を利活用できるよう、協力業者の募集に協力するなど、市町村が進める空家対策、移住・定住施策に連携して取り組んでいます。この専門機関との連携により、安全で確実な取引が保証されています。
宮城県のその他の空き家バンク
市区町村 | 空き家バンク |
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空き家等対策について | |
塩竈市 | 塩竈市空き家バンク制度について |
気仙沼市 | 移住定住支援センターMINATO |
白石市 | 白石市空き家バンク 空き家等対策について |
角田市 | 角田市空き家バンク 空き家等対策について |
登米市 | 登米市空き家情報バンク |
栗原市 | 住まいる栗原ホームサーチ事業(栗原市空き家情報登録制度) |
東松島市 | 空き家バンク(東松島市HP内部) |
七ヶ宿町 | 七ヶ宿町空き家バンク物件情報 |
村田町 | 村田町移住・定住・結婚ガイド |
柴田町 | 柴田町空き家バンク |
川崎町 | 川崎物件ポータルサイト |
山元町 | 山元町空き家バンク |
松島町 | 松島町空き家バンク |
大和町 | 大和町空き家・空き店舗バンク |
大郷町 | 大郷町空き地・空き家バンク |
大衡村 | 大衡村空き家バンク |
色麻町 | 色麻町空き家バンク事業 |
加美町 | 加美町空き家バンク |
涌谷町 | 涌谷町空き家バンク |
美里町 | 美里町空き家等情報登録制度(空き家バンク) |
女川町 | 女川町空き家等活用情報提供事業 |
南三陸町 | 南三陸町空き家バンク |
空き家バンク利用のメリット

市場価格より安価な取得機会
空き家バンクに登録される物件は、一般の不動産市場では流通しにくい物件が多く、市場価格よりも安価で取得できる可能性があります。特に、相続等により早期売却を希望する所有者の物件では、大幅な価格メリットが期待できます。
自治体のサポート体制
空き家バンクは自治体が運営するため、単なる不動産取引だけでなく、移住に関する各種相談や地域情報の提供、移住後のフォローアップなど、包括的なサポートを受けることができます。
地域コミュニティとの円滑な関係構築
自治体が仲介することで、地域住民との関係構築がスムーズに進みやすく、移住後の地域への定着をサポートしてもらえます。地域の慣習や文化についても事前に情報提供を受けることができます。
多様な物件選択肢
古民家から比較的新しい住宅まで、多様な築年数・構造・立地の物件が登録されており、個々のライフスタイルや予算に応じた選択が可能です。
宮城県特有のメリット
宮城県では、東北新幹線や高速道路網の充実により、首都圏へのアクセスが良好な立地の空き家が多数あります。また、比較的温暖な気候のため、住宅の維持管理コストを抑えながら快適な生活を送ることができます。
利用時の注意点

物件の詳細確認
空き家バンクの物件情報は基本的な情報のみの場合が多いため、実際の見学時には建物の構造、設備の状況、周辺環境など、詳細な確認が必要です。特に築年数が古い物件では、耐震性や断熱性について専門家の診断を受けることをお勧めします。
リフォーム・修繕費用の検討
登録物件の多くは何らかのリフォームや修繕が必要な状況にあります。取得費用の安さに惹かれて購入しても、後から多額のリフォーム費用が必要になる場合があるため、事前の詳細調査と費用見積もりが重要です。
地域の気候・文化への適応
宮城県は比較的温暖とはいえ、冬季の寒さや地域特有の文化・慣習があります。特に農村部では、地域コミュニティの結束が強く、町内会や地域行事への参加が期待される場合があります。移住前に地域の特性を十分理解しておくことが大切です。
交通・生活インフラの確認
郊外や農村部の物件では、公共交通機関の便や買い物施設、医療機関へのアクセスが制限される場合があります。日常生活に必要なインフラについて事前に詳細な確認が必要です。
法的手続きの確認
空き家の取得には、所有権移転登記や各種税務手続きが必要です。また、農地付きの物件では農地法の規制もあるため、専門家のサポートを受けながら進めることをお勧めします。
移住支援制度との連携
宮城県の移住支援施策
宮城県では、「みやぎ移住・定住ポータルサイト」を通じて総合的な移住支援情報を提供しています。東京圏からの移住者に対する支援金制度や、起業支援制度など、経済的なサポートも充実しています。空き家バンクでの住宅取得と併せて、これらの支援制度を活用することで、移住の初期費用を大幅に軽減することができます。
主要自治体の独自支援制度
大崎市では、移住者向けの住宅取得支援補助金や家賃補助制度を設けており、空き家バンクで取得した物件のリフォーム費用の一部助成も行っています。栗原市では、子育て世代の移住者に対する特別な支援制度があり、教育環境の充実とともに移住促進を図っています。
登米市では、農業を始める移住者に対する支援が充実しており、空き家バンクで農地付きの物件を取得する場合の特別な相談体制も整備されています。仙台市でも、空き家の活用促進に向けた各種補助制度があり、リノベーション費用の一部助成などを行っています。
成功のポイント

事前の十分な情報収集
宮城県での移住を成功させるためには、まず地域の特性や文化、気候条件について十分な情報収集を行うことが重要です。可能であれば、移住前に何度か現地を訪問し、季節ごとの生活環境を体験してみることをお勧めします。
地域コミュニティとの積極的な関わり
宮城県の多くの地域では、地域コミュニティの結束が強く、新しい住民を温かく迎え入れる風土があります。町内会や地域の祭り、ボランティア活動などに積極的に参加することで、より豊かな移住生活を送ることができます。
リモートワーク・二拠点生活の活用
新幹線や高速道路のアクセスが良好な宮城県では、完全移住だけでなく、週末移住や二拠点生活といった柔軟な居住スタイルも選択できます。まずは二拠点生活から始めて、徐々に移住への準備を進めるという段階的なアプローチも有効です。
専門家との連携
空き家の取得からリフォーム、移住後の生活まで、各分野の専門家との連携が成功の鍵となります。不動産業者、建築士、税理士、行政書士など、必要に応じて専門家のサポートを受けながら進めることで、トラブルを回避し、スムーズな移住を実現できます。
最新トレンドへの対応
近年のテレワークの普及により、都市部での勤務を続けながら地方に居住するスタイルが一般的になっています。宮城県ではインターネット環境の整備も進んでおり、リモートワークに適した物件も空き家バンクで見つけることができます。
まとめ
宮城県の空き家バンクは、豊かな自然環境と都市部の利便性を両立した理想的な移住生活を実現するための重要なツールです。空き家率が12.4%という状況は、移住希望者にとって多様な選択肢があることを意味しています。仙台市をはじめとする各自治体の積極的な取り組みと、宮城県宅地建物取引業協会との連携により、安全で確実な取引環境が整備されています。
宮城県での移住は、単なる住環境の変化以上の価値をもたらします。400年の歴史を持つ文化、日本三景の美しい自然、そして温かい地域コミュニティが、新しい人生の章を豊かに彩ってくれることでしょう。空き家バンクを活用した移住は、初期費用を抑えながら、地域に根ざした生活を始める絶好の機会です。
慎重な準備と地域への敬意を持って臨めば、宮城県での移住生活は必ず成功します。まずは各自治体の空き家バンク情報をチェックし、あなたの理想のライフスタイルに合った物件を探してみてください。新しい人生の扉が、宮城県で開かれることを心から願っています。