京都市の空き家売却で後悔しないための完全マニュアル|税金・費用・手続きを解説

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「実家を相続したけど、誰も住む予定がない」「遠方に住んでいて、空き家の管理が負担になっている」「固定資産税を払い続けるのがもったいない」——京都市内で空き家を所有されている方の中には、このような悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。

空き家を放置すると、建物の劣化、防犯上のリスク、近隣トラブル、そして2029年から始まる「空き家税」の負担など、様々な問題が発生します。

本記事では、京都市で空き家を売却する際に知っておくべき税金、費用、手続き、そして売却を成功させるためのポイントを網羅的に解説します。

京都市の空き家を取り巻く現状

京都市では、空き家や別荘、セカンドハウスなどの居住者のない住宅が増加しており、これが様々な問題を引き起こしています。

空き家が引き起こす問題

空き家の存在は、以下のような問題を生じさせます。

まず、住宅供給の妨げとなります。京都市に居住を希望する方がいる一方で、空き家が放置されることで、本来活用できるはずの住宅が市場に出回らず、住宅不足を助長しています。

次に、防災上・防犯上のリスクです。空き家は管理が行き届かないため、放火や不法侵入の対象となりやすく、近隣住民にとって大きな不安要素となります。また、老朽化した建物が倒壊する危険性もあります。

さらに、生活環境の悪化も深刻です。雑草が生い茂り、害虫や害獣が発生し、ゴミの不法投棄の温床となることもあります。これらは近隣住民の生活環境を著しく悪化させます。

最後に、地域コミュニティの活力低下です。空き家が増えることで、地域の人口が減少し、商店街の衰退や地域行事の担い手不足など、コミュニティ全体の活力が失われていきます。

京都市が導入する「空き家税」とは

こうした問題を解決するため、京都市は「非居住住宅利活用促進税」(通称:空き家税)を導入することを決定しました。この税金は、2029年度(令和11年度)から課税が開始される予定です。

課税対象

京都市の市街化区域内に所在する非居住住宅(その所在地に住所を有する者がいない住宅)の所有者が課税対象となります。つまり、誰も住んでいない空き家や別荘を所有している場合、この税金が課されることになります。

税率

空き家税は、以下の2つの要素から計算されます。

1. 家屋価値割:非居住住宅に係る固定資産評価額(家屋)× 0.7%

2. 立地床面積割:非居住住宅の敷地の用に供する土地に係る1㎡当たり固定資産評価額 × 当該非居住住宅の延べ床面積

評価額税率
700万円未満0.15%
700万円以上900万円未満0.3%
900万円以上0.6%

税額の試算例

例えば、以下のような空き家の場合を考えてみましょう。

•家屋の固定資産評価額:500万円
•土地の1㎡当たり固定資産評価額:10万円
•建物の延べ床面積:100㎡
•土地評価額×延べ床面積:10万円 × 100㎡ = 1,000万円

家屋価値割:500万円 × 0.7% = 3.5万円 立地床面積割:1,000万円 × 0.6%(900万円以上の税率) = 6万円 合計:3.5万円 + 6万円 = 9.5万円

このように、空き家を所有しているだけで、固定資産税に加えて、年間約10万円の追加負担が発生する可能性があります。

空き家税を避けるには

空き家税を避けるためには、以下のいずれかの対応が必要です。

1、自分や家族が住む:その所在地に住所を有する者がいれば、課税対象外
2、賃貸に出す:誰かに貸して居住してもらえば、課税対象外
3、売却する:所有権を手放せば、課税義務もなくなる
4、取り壊す:建物を取り壊して更地にすれば、「非居住住宅」ではなくなる(ただし、固定資産税の住宅用地特例が適用されなくなり、土地の固定資産税が最大6倍になる可能性がある)

このように、空き家を放置することは、経済的にも大きな負担となります。2029年までに、何らかの対応を取ることが重要です。

空き家売却で利用できる「3,000万円特別控除」

空き家を売却する際、税金面で大きなメリットとなるのが、「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」です。この制度を利用すれば、売却で得た利益(譲渡所得)から最大3,000万円を控除でき、大幅な節税が可能です。

制度の概要

被相続人(亡くなった方)の居住の用に供されていた家屋及び敷地等を相続または遺贈により取得した場合、一定の要件を満たせば、譲渡所得から最大3,000万円を控除できます。

適用要件

この特例を利用するには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

1. 被相続人の要件

•被相続人が一人で住んでいた家であること:配偶者や他の親族と同居していた場合は対象外
•昭和56年5月31日以前に建築された建物であること:旧耐震基準の建物が対象

2. 相続後の要件

•相続から譲渡まで引き続き空き家でなければならない:相続後に誰かが住んだり、賃貸に出したりした場合は対象外
•相続開始日から起算して3年が経過する年の12月31日までの譲渡:例えば、2024年に相続した場合、2027年12月31日までに売却する必要がある
•特例の適用期限である令和9年(2027年)12月31日までの譲渡:この期限を過ぎると、特例が利用できなくなる可能性がある

3. 譲渡の要件

•譲渡価格が1億円以下であること:売却価格が1億円を超える場合は対象外
•建物を取り壊して更地にして売却、または耐震リフォームをして売却:そのままの状態で売却する場合は、耐震基準を満たす必要がある

節税効果の試算

例えば、以下のようなケースを考えてみましょう。

•相続した空き家を3,000万円で売却
•購入時の価格(取得費):不明(概算取得費として売却価格の5%を使用)
•売却にかかった費用(譲渡費用):100万円(仲介手数料など)

通常の場合(特例なし):
 •譲渡所得 = 3,000万円 – (3,000万円 × 5%) – 100万円 = 2,750万円
 •譲渡所得税(長期譲渡所得の場合)= 2,750万円 × 20% = 550万円

特例を利用した場合:
 •譲渡所得 = 3,000万円 – (3,000万円 × 5%) – 100万円 = 2,750万円
 •特別控除後 = 2,750万円 – 3,000万円 = 0円(控除額が譲渡所得を上回るため)
 •譲渡所得税 = 0円

このように、特例を利用することで、550万円の節税が可能です。

注意点

この特例は非常に有利な制度ですが、要件が厳しく、適用期限も限られています。相続した空き家を所有している方は、早めに売却を検討し、特例の適用を受けることをおすすめします。

また、特例の適用には、市区町村が発行する「被相続人居住用家屋等確認書」が必要です。売却前に、京都市の担当窓口に相談し、必要な書類を揃えておきましょう。

空き家売却にかかる費用と税金

空き家を売却する際には、様々な費用と税金がかかります。事前に把握しておくことで、手取り額を正確に計算できます。

1. 仲介手数料

不動産会社に仲介を依頼した場合、売却価格に応じて仲介手数料がかかります。

売却価格仲介手数料の上限
400万円超売却価格の3% + 6万円 + 消費税

例えば、2,000万円で売却した場合:(2,000万円 × 3% + 6万円) × 1.1 = 72.6万円

2. 印紙税

売買契約書に貼付する印紙代です。

売却価格印紙税額
1,000万円超〜5,000万円以下1万円
5,000万円超〜1億円以下3万円

3. 登録免許税

住宅ローンが残っている場合、抵当権を抹消するための登録免許税がかかります。費用は、不動産1件につき1,000円です。

4. 譲渡所得税・住民税

不動産を売却して利益が出た場合、譲渡所得税と住民税が課税されます。税率は、所有期間によって異なります。

所有期間所得税住民税合計
5年以下(短期譲渡所得)30%9%39%
5年超(長期譲渡所得)15%5%20%

ただし、前述の「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」を利用できれば、多くのケースで税金を大幅に軽減できます。

5. その他の費用

•測量費用:境界が不明確な場合、測量が必要(30万円〜50万円程度)
•建物の解体費用:更地にして売却する場合(100万円〜200万円程度)
•ハウスクリーニング費用:内覧前に清掃する場合(5万円〜10万円程度)
•残置物の処分費用:家具や家電が残っている場合(10万円〜30万円程度)

空き家売却の流れ(7ステップ)

空き家の売却は、以下の7つのステップで進めます。

ステップ1:空き家の現状確認と書類の準備

まずは、空き家の現状を確認し、売却に必要な書類を準備します。

確認すべきポイント

•建物の状態(雨漏り、シロアリ被害、傾きなど)
•境界の明確さ(隣地との境界が確定しているか)
•接道状況(建築基準法上の道路に接しているか)
•再建築の可否(再建築不可物件かどうか)

準備すべき書類

•登記済権利証(または登記識別情報)
•固定資産税納税通知書
•建築確認済証(あれば)
•測量図(あれば)
•相続関係書類(相続した物件の場合)

ステップ2:複数の不動産会社に査定を依頼

空き家の売却では、複数の不動産会社に査定を依頼することが重要です。特に、築古物件や再建築不可物件の場合、不動産会社によって査定額に大きな差が出ることがあります。

査定を依頼する際のポイント

•最低でも3社以上に依頼する
•一般的な不動産会社だけでなく、築古物件や空き家の専門業者にも依頼する
•査定額だけでなく、その根拠や販売戦略についても説明を受ける

ステップ3:売却方法を決定する

査定結果をもとに、「仲介」か「買取」かを決定します。

仲介がおすすめのケース

•時間に余裕があり、できるだけ高く売りたい
•物件の状態が比較的良好で、買主が見つかりやすい
•立地が良く、需要が見込める

買取がおすすめのケース

•早く確実に現金化したい
•相続や転居の期限が迫っている
•物件の状態が悪く、仲介では売れにくい
•再建築不可物件など、特殊な条件がある

ステップ4:不動産会社と媒介契約を結ぶ(仲介の場合)

仲介を選んだ場合、不動産会社と媒介契約を結びます。媒介契約には、「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類があります。

空き家の売却では、不動産会社に積極的に販売活動を行ってもらうため、「専任媒介契約」または「専属専任媒介契約」がおすすめです。

ステップ5:売却活動の開始

媒介契約を結ぶと、不動産会社が売却活動を開始します。空き家の場合、内覧前に以下の準備を行うことで、売却がスムーズに進みます。

•清掃:ハウスクリーニングを依頼し、清潔な状態にする
•残置物の処分:不要な家具や家電を処分する
•簡易的な修繕:壊れた箇所や汚れた箇所を修繕する
•通風・換気:定期的に窓を開けて、カビや悪臭を防ぐ

ステップ6:買主と売買契約を締結

購入希望者が現れ、価格や条件について合意に至ったら、売買契約を締結します。契約時には、手付金(通常、売却価格の5〜10%)を受領します。

ステップ7:決済と引き渡し

売買契約から約1ヶ月後、決済と引き渡しが行われます。決済日には、買主から残代金が支払われ、同時に物件の所有権が移転します。

空き家の場合、引き渡しまでに以下の対応を完了させておく必要があります。

•電気・ガス・水道の解約
•残置物の完全撤去
•鍵の引き渡し準備

空き家売却を成功させる5つのポイント

ポイント1:早めに行動する

空き家は放置すればするほど、建物が劣化し、売却価格が下がります。また、2029年からは空き家税が課税され、経済的な負担も増えます。さらに、「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」の適用期限は2027年12月31日までです。

これらを考慮すると、空き家を所有している方は、できるだけ早く売却を検討することをおすすめします。

ポイント2:空き家・築古物件の専門業者に相談する

一般的な不動産会社では、空き家や築古物件の扱いに慣れていないことがあります。特に、再建築不可物件や、接道義務を満たさない物件の場合、専門知識を持つ業者に相談することが重要です。

また、京都市内の物件であれば、京町家の専門知識を持つ業者に相談することで、より高値で売却できる可能性があります。

ポイント3:「3,000万円特別控除」の適用を確認する

相続した空き家を売却する場合、必ず「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」の適用要件を確認しましょう。この特例を利用できれば、数百万円の節税が可能です。

適用要件が複雑なため、税理士に相談することをおすすめします。

ポイント4:境界を確定させる

空き家の多くは、隣地との境界が不明確なことがあります。境界が確定していないと、買主が住宅ローンを組めないことがあり、売却が難しくなります。

売却前に測量を行い、境界を確定させておくことで、スムーズな売却が可能になります。

ポイント5:複数の売却方法を検討する

空き家の売却方法は、「仲介」と「買取」だけではありません。以下のような選択肢も検討してみましょう。

•リノベーションして賃貸に出す:売却せずに、収益物件として活用
•隣地の所有者に売却する:隣地と統合することで、再建築可能になる場合がある
•不動産会社に寄付する:売却が難しい場合、寄付を受け入れてくれる不動産会社もある

京都市の空き家対策支援制度

京都市では、空き家の活用・流通を促進するため、様々な支援制度を設けています。

建物活用補助

空き家を売却した際の仲介手数料を補助する制度があります。詳細は、京都市空き家対策室(Kyoto Dig Home Project)に問い合わせてください。

まとめ:2029年までに空き家の対応を

京都市で空き家を所有している方は、2029年から始まる空き家税の課税開始までに、何らかの対応を取ることが重要です。放置すればするほど、経済的な負担が増え、建物の劣化も進みます。

また、相続した空き家を売却する場合は、2027年12月31日までに売却することで、「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」を利用でき、大幅な節税が可能です。

空き家の売却は、専門知識を持つ不動産会社に相談することで、より有利な条件で進めることができます。まずは、複数の不動産会社に査定を依頼し、ご自身の状況に最適な売却方法を見つけましょう。

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参考文献

•京都市「非居住住宅利活用促進税について」https://www.city.kyoto.lg.jp/gyozai/page/0000296672.html
•京都市「所得税及び個人住民税の特例措置(空き家等の譲渡所得の3,000万円特別控除)」https://www.city.kyoto.lg.jp/tokei/page/0000202925.html
•国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
•京都市「空き家対策総合案内」https://www.city.kyoto.lg.jp/tokei/page/0000168988.html

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